なんてことない話

おじいちゃん、私、運転してるよ!

雨の日に、息子を歯医者に連れて行き、遅刻して幼稚園に送り届けた帰り道。私も勝手を言って遅刻している身なので、雨の運転に慎重になりながら、会社への道のりを急いでいた。

こんな雨の日は車移動できることが大変ありがたい。こうした子供のちょっとした用事で遅刻させてもらえる、理解ある会社ももちろんありがたいけれど、電車や自転車を使っての送り迎えだったら半日仕事になってしまうだろう。

そんなことを考えながらふと、「おじいちゃんが今の私を見たらなんて言うかな。」と思った。

母方の祖父は関西に住んでいて、物静かでとても優しい人だった。よく喋る賑やかな祖母の隣でいつもニコニコ笑っている、思い出すのはそんな光景ばかり。

そして私には姉が2人がいるのだけれど、大学に入る時、“祖父からもらった入学祝いで免許を取る”というのがなんとなく習わしになっていた。

私も姉たちに倣って大学に入ってしばらくしてから教習所に通い出し、順調に免許を取得…するはずだったのだけれど、飲み会やアルバイト等、学業以外のことで大忙しで、あっという間に期限が過ぎて仮免を失効してしまった。そうして就職し、教習所に通い直す間もなく、教習所の期限を迎えることになった。

つまり私は、せっかくの祖父の入学祝いを無駄にしてしまったのだ。

関西の祖父母の家に遊びに行くと「びびちゃん、免許は取れたかぁ~?」と聞かれ、その度に「忙しくてなかなか通えてないけど、そのうちね~」なんてごまかして、本当に胸が苦しかった。そのうち祖父から免許のことを聞かれることはなくなった。きっとなんとなく分かっていたんだろうなぁと思う。

その後、祖父が他界してもなお無免許のままだった私だが、結婚して夫の赴任に付いて中国に行く直前、会社を辞めてから赴任するまでの2ヶ月弱の間に、「きっとこれが最後のチャンス!」と意を決して教習所に通い詰めた。なんとか赴任前に仮免まで取り、一時帰国の際に試験を受けて、無事免許を取得。

なんとも綱渡りで慌しい…これが私の、人生2度目の教習所物語。(ちなみに数年ぶりとはいえ、路上まで走ったことのある経験者なので実技はめちゃくちゃ褒められた。笑)

免許証が交付されて真っ先に向かったのは、実家のご仏壇。祖父に手を合わせながら、ずっと心のどこかに引っかかっていた「ごめんね、ありがとう」を伝えた。

三姉妹の中で私だけ花嫁姿も孫の顔も見せられなかったけど、しかも一周回ってまた独身に戻っちゃったけど、今こうして一丁前に車に乗ってるところは、きっとニコニコ見ててくれてるんじゃないかなぁ、なんて思った。

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