私の母は関西出身です。
祖父母はすでに他界しているのですが、
にぎやかな祖母とその隣でいつもニコニコしている物静かな祖父、
2人を思い出すと目に浮かぶのはそんな光景ばかりです。
祖母はそれはそれは華やか(というか派手)でとにかく豪快!
朝から「ガソリンや~」と言ってビールを飲むような人でした。
でも孫にはとても優しく、筋金入りのババ馬鹿で、口癖のように私たち姉妹に
「あんたらはえぇ子や、どこに出しても恥ずかしくない」と言ってくれていました。
話は逸れますが私がまだ小学生の頃に東京に遊びに来た際、
レストランで宝塚出身の某有名女優に遭遇したことがありました。
とても小さなレストランですぐそこで食事をしているその女優さんに向かって
「○○○や!(呼び捨て)」と叫んだ次の瞬間、
「でもあんたらの方がキレイやな~」と…
それもまぁまぁの声のボリュームで…
小学生ながらに「やめてくれ」と思った記憶があります。笑
そんな優しい?祖母と、一緒にお皿洗いをしていた時のこと。
中学生か高校生ぐらいだったかと思います。
あまり人のやることに対してとやかく言わない祖母ですが、その時だけ
「びびちゃん、お皿をゆすぐ時はもう少しこすりながらゆすいだ方がええよ。」
と言ったのです。
私は泡をつける時にスポンジでしっかりこすっていたつもりですが、
たしかに洗い流す時は水で泡をサーッと流すだけで、
ぬめりまできちんと落ちていなかったのかもしれません。
これ、なんてことない家事の教えなのですが、ものすごーく印象深いんです。
他にお料理とかも教えてもらったこともあるはずなのですが、
なぜかこの一言だけが強烈に残っているのです。
どれぐらい強烈かというと、
子供たちに朝ごはんを食べさせてバタバタと食器を洗っている時、
会社のお昼休みに食べ終わったお弁当箱を洗っている時、
晩ごはんの後に、早く子供たちをお風呂に入れて寝かさなきゃと焦りながら食器を洗っている時ですら、
必ず頭の中で祖母のこの言葉が蘇るんです。つまり1日に3回も!
それはもう、ある種、呪いの言葉のよう。笑
祖母とのいい思い出なので、呪いという言葉の意味はそぐわないのですが、
「お皿を洗うと必ず思い出す」という結びつきの強烈さが、もはや呪いのレベル。
オーロラ姫が15歳になった時に糸車の針に刺されて100年の眠りにつくのを避けられなかったように、
私もまた、お皿を洗う時に、祖母との温かいやりとりを思い出すことを避けられないのです。
一方で、嫌な呪いもあります。
夫との関係がどん底に最悪だった第2子妊娠中の私の誕生日に
夫が連れて行ってくれたレストラン(関係が破綻していても尚、義務感でそういうことをする人でした)
の前を通ると、条件反射で吐き気がします。
今でこそ呪いの威力は弱まり、吐き気はしなくなりましたが、
それでもあの時に夫に言われた言葉、言ってもらえなかった言葉を思い出し
暗い気持ちになることは避けられません。
もしかしたら私も気づかないところで誰かに呪いをかけているかもしれない。
どうかそれが誰かの悲しい思い出、辛い思い出を引き出す呪いではなく、
祖母が遺してくれたような、優しい置き土産のような呪いでありますように。
いつでも優しくて温かい、前向きな言葉だけを発するように、心がけたいと思うのです。
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